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水神とは

 水神とは、水に関係するキーワード(洪水や渇水等の付く言葉、井戸、川、池など)に対して具体的な役割と影響力を持つ存在で、龍神、蛇、河童などが水神の主体として挙げられています(文献1)。その役割と影響力から水神信仰の種類(文献2、3、4)を挙げると、飲料水の守護神としての水神、灌漑用水に関わる水神、雨乞いの役割を持った水神、水難除け・防水の神としての水神、大漁や漁業の安全に関わる水神、河童の伝承と関わる水神など多岐にわたります。そのため、水神の性格を一括して述べることができません(文献5)。従って、水神の防災への活用を考える際には、水神が災害と関連して祀られているのかどうかを地域住民から得られる情報に基づいて判断することが必要になってきます。

 ここで、災害と関連する水神はどんな特徴を持っているのかについて調べた既往研究を紹介します。茨城県では、久慈川、鬼怒川、霞ヶ浦、北浦など河川、湖沼の岸に水神の祠が多く、洪水の難から村を守る神として祀られています(文献6)。また、静岡県大井川下流域では、水防の神として水神を祀り、洪水の被害が大きい場所に水神社が多く祀られています(文献7)。さらに、輪中集落でも、決壊地点に水神社や決壊守護神(水神)が祀られています(文献8)。その他、水神が伝説と繋がっている事例もあります。利根川布鎌地区では、水神様が白馬に乗って堤防を見回ったおかげで洪水の難から逃れることができたという伝説が残っており、堤防の守護神として水神が祀られています (文献9)。

 下の写真は、実際に東峰村で祀られている水神です(写真1、2)。この例は、石でできた水神です。

​​写真1 東峰村の高木神社に祀られる水神の社

​​写真2 石でできた水神のご神体

参考文献

  1. 平松登志樹:水神様の役割に関する研究,日本民族学,Vol. 193, pp. 192-201, 1993.

  2. 直江廣治:利根川における水神信仰,人間科学,Vol. 22, pp. 186-198, 1970.

  3. 高原三郎:大分の雨乞,高原三郎,pp. 299-318, 1984.

  4. 林田守保:田主丸町史 川の記憶,田主丸町, 第一巻,pp. 399-465, 1996.

  5. 民俗学研究所編:民俗学辞典,東京堂出版,pp.304-305, 1951.

  6. 高谷重夫:雨の神―信仰と伝説,民族民芸双書,305p., 1984.

  7. 矢澤和宏:大井川流域における水神信仰の地域性,駒沢地理, Vol. 25, pp. 115-138, 1989.

  8. 安藤萬壽男:輪中―その展開と構造―,古今書院,pp. 216-224, 1975.

  9. 鳥越皓之編:環境の日本史⑤ 自然利用と破壊―近現代と民族―,吉川弘文館,pp. 200-226, 2013.

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